第17章 太陽と水着とたこやき
思わず持っていたトレーの上に置いているコーラをぶちまけそうになりながらも、何とかその声の主の後ろに隠れたわたしは、大好きな人の名前を呼ぶ。
「陣平くん!」
「俺の彼女に何か用すか?」
「なんだ。彼氏いたって本当だったのか。
つまんねー」
さっきは散々わたしが彼氏と来てるって言っても信じなかったくせに、陣平くんが姿を現した途端ナンパ男たちは即座に退散。
陣平くんはやる気満々だったようで、あっさりと引き下がられ逆に拍子抜けしたのか、その怒りの矛先はわたしに向く。
「おい!!バカミコト!!」
「ひっ!なに?!」
「だから俺も行くって言ったんだよ!
こうなることが読めてたから!!」
「…読めてたって…どうして?」
「…だからそれは…もっと自覚しろよ…
お前は可愛いの!
可愛いし、身体つきもエロいから男が寄ってくんだよ!!」
「え、エロいって…」
「頼むから、俺のそばを離れんな…」
そう言いながら、陣平くんはわたしから食べ物が乗ったトレーを取り上げると、わたしの手をぎゅっと握ってパラソルの方へと歩いた。
「陣平くん、王子様みたい」
「あぁ??!喧嘩売ってんのか!?」
「王子様だよ?!褒め言葉じゃんー!」
うるせぇと言いながら顔を膨らす陣平くんが可愛くて、わたしはきゃっきゃと笑いながら陣平くんをからかう。
「そんなこと言ってっと、たこ焼き全部食うぞ」
「あ!だめ!!そのたこ焼き楽しみにしてたの!」
そう言って陣平がもつたこ焼きを奪い返そうと、陣平くんの方へ身を乗り出したとき、
陣平くんはわたしの肩を抱いて不意打ちで唇を奪った。
「…っ…!」
陣平くんの柔らかい唇が離れる時、ちゅ…と音がして思わず陣平くんを見た。
「たこ焼きより、こっちの方が美味いな」
「ず、ずるい!不意打ちでこんな!」
「はいはい。
ほら、たこ焼き食うんだろ?あーん」
と、陣平くんにたこ焼きを差し出されると、大人しく口をぱか…と開けるわたし。
単純なやつ。
なんて笑いながらも、陣平くんはわたしの肩に回した腕を解こうとしなかった。