第17章 太陽と水着とたこやき
売店に近づくと、アユがレジをしているのがすぐにわかった。
「アユー!」
「ミコト!来たんだ?陣平さんも?」
「うん。あそこ」
わたしが指差す方を見ると、陣平くんはビーチベンチに座りながらサングラスをかけ、携帯をいじってる。
「ほんとだ。いいじゃんー!彼氏とプール♪
わたしも彼氏欲しくなったわ」
「色んな人とデートしてるくせに」
「へへ。付き合う前が一番楽しいと思ってたけど、わたしもそろそろ本命作ろうかなー。
…彼氏にそんな風にパーカー着せられたいし?」
「あ、これ?
肌が焼けるからって貸してくれて…」
腕を広げて嬉しさを全開にそんなことを言うわたしを、アユは呆れた目で言う。
「バカね。そんなわけないでしょ?
それは、自分の可愛い彼女の水着姿を他の男にできるだけ見せたくないって独占欲の現れ!」
「えぇえ?!そうなの?!
独占欲?!陣平くんが…
わたしを独占したいって思ってるってこと?!」
思っても見なかった真実に、わたしは思わず感動すら覚えた。
だって、さっきわたしが他の女の子に陣平くんを見せたくないって思ったみたいに、陣平くんも同じことを思ってくれてたんだ…
それだけで心が満たされてフワフワした顔をするわたしを、呆れた目で見ながらアユが笑う。
「で?感激してるところ悪いんだけど、注文何にする?」
「はっ!えっと、たこ焼きとかき氷と…あとアメリカンドックと焼きそば!
それと、コーラMサイズ2つで!」
「はいよー。ちょっと待ってて」
アユは注文を聞くと、テキパキとトレーの上に注文した料理を乗せていく。
最後に、手首につけた会計用のバーコードを読み取ると、ウインクして言った。
「ほい!じゃあ精算も終わったし、引き続き楽しんで〜」
「うん!ありがと!」
アユに手を振ると、わたしはそのトレーを両手で持ち、こぼさないように慎重に陣平くんのいるパラソルへと歩き出した。