第17章 太陽と水着とたこやき
陣平くんが浮き輪を取りに更衣室に戻ることになったので、わたしはパラソルの下のビーチベンチに腰掛けた。
一緒に着いて行こうかなと思ったけど、今日のプールは非常に混雑していて、せっかく手に入れたベンチを手放すのは惜しい気持ちになった。
去っていく陣平くんの背中を見つめながら、思う。
「かっこいい…」
よく、彼氏になった途端かっこいいと思わなくなる。なんて聞いたことがあるけどとんでもない。
片想いだった時より、陣平くんがさらに眩しく見えて仕方ない。
そう思っていると、隣のパラソルにいたギャルたちが、わたしと全く同じ単語を大きな声で言った。
「ねぇ!さっきの人、かっこよくない?」
「思った!超いい身体してたよね」
それって、陣平くんのこと?!
思わずわたしはその声のする方をバッと見ると、見た目がイケイケなお姉さんたちが髪をいじりながら話を続けている。
「背も高かったし、顔もイケメン。
えー、メアド交換してくれないかな」
わたしはこの時気付いた。
まさか陣平くんって、めちゃくちゃ女の子にモテるのでは?!!
今までそばにお兄ちゃんがいたり、降谷さんがいたりして、その2人の方が女の子に対して優しい分、陣平くんにハートの目を向ける女の子は少ないものだと思っていたけど…
そりゃそうだよね?!
だってあんなにかっこいいもん。
わたしだけが陣平くんの魅力に気付いてるなんてそんな都合のいいことあるわけない。
そう思うと途端に焦りが生まれてくる。
今こうしてる間にも、陣平くんが他の女の子に声かけられていたらどうしよう…
っていうか、わたしにパーカー貸してる場合じゃないから!!
待ってろと言われた手前、勝手に動いて陣平くんを探しに行くわけにもいかず、わたしは複雑な気持ちを抱えたままパラソルの下で陣平くんが戻ってくるのを待った。