第17章 太陽と水着とたこやき
松田side
電車を乗り継いでプール施設に到着した。
照りつける太陽の下、水着で客たちが楽しそうに夏を満喫しているのを見て、ミコトと海に行った時のことをふと思い出した。
ミコトは、陣平くんにフラれた日とか言っているが、正直あの頃からきっとミコトのこと好きだったんだと思う。
ただそれが恋心だと自覚したのが遅かっただけだ。
あの時は、ミコトの水着姿をジロジロ見る奴が大勢いて、思わずイライラしたのを覚えてる。
それを思い出し、俺はハッとして更衣室に向かおうとするミコトを呼び止めた。
「ミコト!」
「?なーに?」
「出てくるとき、これ着ろよ」
そう言って、自分が着る予定だったパーカーをポイッと投げると、ミコトは慌ててそれをキャッチして不満げに言う。
「えー!せっかく水着買ったのに?」
「…日焼けすんだろ。
お前、焼けたら赤くなって痛いクセに」
嘘だ。
正直に、お前の水着姿を俺がいないところで誰かに見られるのが嫌だ。
そう言えばいいのに俺は相変わらず意地を張って嘘をつく。
「あぁ…たしかに!」
こいつ本当に医学部なのか?と疑いたくなるぐらい単純なミコトは、そんな嘘にあっさりと納得し、俺のパーカーを抱きしめたまま更衣室に駆けて行った。
まあいい。
とりあえずこれで俺の本来の目的は達成だ。
あの2年前の夏から何一つ進歩していない自分に呆れながらも、俺も着替えるために更衣室へと向かった。
と言っても、水着一枚着替えるだけの俺は、更衣室にいたのは数分足らず。
先に入ったミコトよりも早く出てきた俺は、更衣室の出口前でミコトが出てくるのを待った。