第16章 ある夏のはじまり
陣平くんに優しく誘導されながらベッドへ向かい、横になると少しだけ腹痛がマシになった。
陣平くんの腕枕で彼の胸に顔を埋めると、陣平くんの匂いで鼻がいっぱいに満たされる。
「陣平くん…」
「んー?」
「わたしね、陣平くんのこと、ものすごく好きなんだ…」
そこまで言うと、なぜか涙が溢れた。
好きなんて言葉じゃ伝えきれないぐらい、わたしは陣平くんがすべて。
「こんなに優しくしてくれるの、わたし限定がいい」
そんなワガママを言うわたしは、子供なんだろうか。
陣平くんと付き合えただけでいいなんて言っていた癖に、気付けば彼を独占したくてたまらない。
「心配しなくても、ミコトだけだって。
…俺は萩原とは違う」
「…ほんとにわたしだけ?」
「あんだよ。信じられねぇのか?」
「そうじゃないけど…
…じゃあ、キスして?
わたしだけって、キスして教えて?」
腕枕してハグだけじゃ足りないよ…
エッチはできないけど、せめてキスしたい。
ひとりよがりな願望を声に出すわたしを、陣平くんはぽんぽんと頭を撫でたあとゆっくりと頬に手を添えた。
「俺からもひとつ、言っとく」
「?なに?」
「キスしてとか、ぜってー俺にしか言うなよ?」
そう言うと、わたしが返事をする前にわたしの唇をゆっくりと奪った。
キスをして、角度を変えてまたキスをする。
陣平くんの無骨な手が、わたしの頬と髪に触れるとそこから甘く溶けそうになる。
陣平くんの熱い唇がゆっくりと自分の唇から離れたとき、わたしは彼の目をじっと見つめながら言った。
「大好きだよ。陣平くん」
「俺も。お前が好き」
そしてまた、指を絡めながら手を繋いで甘いキスを交わした。