第16章 ある夏のはじまり
シャワーを終え、ドライヤーで髪を乾かしているとだんだんお腹が痛くなってきた。
しかも、陣平くんとイチャイチャするぞと思っていた分、ダメージ2倍だ。
「はぁ…」
ため息を吐きながらお腹をさすり、ドライヤーを引き出しにしまった時、陣平くんが脱衣所に入って来た。
「ミコト」
待ちきれなかったのか、わたしの名前を呼びながら後ろからぎゅっと抱きしめて捕まえてくる。
そして後ろから唇を奪おうとしてくる陣平くんに、わたしは咄嗟に彼の身体をグッと押して言った。
「ごめんなさい!」
「は?」
突然前触れもなく謝られた陣平くんは首を傾げながらわたしを見た。
わたしは、半泣きになりながら自分の顔を手で覆い、小さい声で言った。
「…生理来ちゃった」
がっかりしたかな…?
このタイミングで、ありえねぇって思ったかな?
陣平くんがどんな反応をするか怖くて、俯いていると、陣平くんはわたしの身体をぎゅっと腕の中に閉じ込めた。
「え…」
「バァーーーーーーカ!!」
「ば、ばか??」
むしろ、陣平くんより絶対頭いいんですけど!と言わんばかりに、わたしは顔を上げて陣平くんを見た。
「謝ってんじゃねェよ。
俺は、お前の身体目的で付き合ってるわけじゃねえっつの。」
「陣平くん…」
呆れたようにため息をついた陣平くんは、わたしの髪を撫でながら、腰に手を添えて優しく言う。
「身体、辛くねぇ?
早いところ寝ようぜ。何もしねぇから」
陣平くんはいつも唐突に優しい。
こんな風に優しくするの、わたしだけにしてほしい。
こんなの、世界中の女の子全員が陣平くんに惚れてしまうよ…