第16章 ある夏のはじまり
そりゃそうだな。
俺がこの話をするのは初めてだ。
「今の爆処は、ただ爆発物を処理する機動隊だ。
…この手で爆弾犯を捕まえるためには、一課に異動しなきゃいけねぇ。
だから、異動願いをもう何度も出しているが、そう上手くはいかねぇな」
そう言って、また居心地のいいミコトの身体に顔を埋めると、ミコトはまた俺の髪を撫でながら言った。
「そっか…
じゃあ、次こそは通るといいね」
「え…」
「?だって、陣平くん諦めないでしょ?
承認されるまで、異動願い出し続ける気がする…
ふふ。そのうちきっと、見かねて異動させてもらえるよ。」
そう言いながら楽しそうに笑うミコトを見て、俺は救われた。
そうだよな。
今回ダメなら、また次もその次も出せばいい。
そして却下されたらその度にこうして、ミコトに甘えればいい。
俺はミコトの身体に埋めていた顔を上にあげた。
ミコトが優しい顔して俺の顔を覗き込む瞳と目が合うと、俺の口から思わず言葉がこぼれた。
「俺、ミコトのことすげぇ好きだ…」
「っ…もう…陣平くんわたしのこと何回ドキドキさせれば気が済むの」
「1億回」
そんな小学生みたいな答えを言いながら、俺はミコトの唇をゆっくりと奪った。
ちゅ…
唇を離してミコトの顔を見ると、ミコトは顔を赤くしながら俺を見て言う。
「食器とか…片付けないと」
「…あとで俺がやっとく」
そう言いながら、俺はまたミコトの唇にキスをする。