第16章 ある夏のはじまり
松田side
「ん…」
目を閉じた頃は、窓から夕焼けが見えていたが、再び目を開けた窓の外は真っ暗だった。
時計を見ると20時5分。
2時間もふて寝してたって訳か。
そう言えば、ミコトはどうした…?
せっかく久しぶりの2人の時間だったのに、俺は仕事でのイライラを引きずり、ミコトにまで八つ当たりのようにイライラしてふて寝。
最悪すぎる…
はあぁ…とため息を零したあと、机の上にメモが置いてあるのに気付いた。
慌ててそれを手に取ると
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冷蔵庫の中に、御飯作ったの入ってるから温めて食べてね。
陣平くんお仕事大変だと思うけど、わたしはいつでも陣平くんの味方だよ。
次、また会える日までいい子にしてるからね^^
ミコト
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まさか…帰ったのか。
俺は急いで冷蔵庫の中を確認した。
ミコトが作ってくれた大量のおかずが冷蔵庫に綺麗に並べられている。
なんなら、わざわざこの日までに食べてね。と付箋まで貼ってある。
「ミコト…」
バカなやつだ。
ふて寝した俺の飯なんて、作る必要ねぇのに…
タッパーを手に取ると、まだほんのり温かかった。
まだそんなに時間が経っていない…?
そう思った俺は慌てて家を飛び出した。
ミコトはきっと電車で帰ろうと駅に向かっているはずだ。
そう考えた俺は駅までの道を全速力で走り出した。
バカなのは、俺だ。
俺の一番の使命はミコトの笑顔を守ることだったのに。
あれを作っているとき、ミコトはどんな顔をしていただろう。
作り終えて、俺がまだふて寝しているのを見たミコトは何を思った?
温かいうちに食べてほしいって思っただろうな…きっと。
そう思うと、早くミコトを抱きしめて謝りたくて、俺はひたすらに前に前に走った。