第14章 桜の木の下で ☆
松田side
誰かにメシを作ってやりたいと思ったのは思えば初めてだ。
ミコトはさっきから俺の方を心配そうに見つめている。
いつもと立場が真逆だな。
そう思いながら出来上がったチャーハンを見て俺は唖然とした。
「不味そう」
自分で言うのも何だが、ラーメン屋で出てくるチャーハンにはとても見えず、黒い物体がどんよりと皿の上に乗っている。
「陣平くん…なんかすごい匂いするけど…」
心配そうに俺のそばに近寄ってきたミコトは、皿に乗った黒焦げのチャーハンを見て目を丸くした。
俺は即座にそれを処分しようと皿を持ち上げ、一直線にゴミ箱へと向かう。
「捨てる。」
「え!なんで?!」
「何でって…お前にこんな謎の物体食べさせられるわけねぇだろ」
そう言いながら問答無用で捨てようとする俺を、ミコトは全力で止めにかかる。
「待った!陣平くんがわたしに初めて作ってくれたんだよ?!
食べる!!!」
すごい勢いでそう言われ、俺はうっかりその皿をミコトに取り上げられた。
「やめとけって。絶対美味しくねぇから」
そう言う俺に、ミコトは笑いながら言った。
「陣平くんが作ってくれたってことに意味があるの。
味なんて、二の次だよ」
そして、ミコトはスプーンでその黒い物体を掬うと、ぱく…と口の中へと運んだ。