第14章 桜の木の下で ☆
花見を終え、わたしたちは手を繋いで陣平くんの家へと向かった。
「夜、何食う?」
「さっきお弁当たくさん食べたのにもう夜ご飯の話?」
「うるせーな。
スーパー通り道だから、寄ってくか。」
「いいよ?何食べたい?」
当然のようにわたしが作るものと思っていたけれど、陣平くんが妙な提案をする。
「いや、俺が作る。」
「え?」
「お前が食べたいもん、俺が作ってやるよ。
弁当の御礼」
まさかの提案にわたしは目を丸くした。
だって、陣平くん料理絶対出来ないでしょ!?
けれど、せっかく御礼に振る舞ってくれると言うのだから、邪険には出来ず、わたしは必死で作るのが簡単そうな料理を頭に思い浮かべた。
そして出てきたのは
「チャーハン!」
これなら、野菜とご飯と卵で炒めるだけ。
味付けは塩胡椒で十分だし、難易度低いよね…?
精一杯気を遣った提案を、うすうす感じ取っているであろう陣平くんは、首を傾げてわたしを見た。
「…そんなんでいいのか?」
「うん!チャーハン食べたい!
作って?陣平くん。」
「…まかせろ。
チャーハンって…何入ってた?」
「…たまねぎと刻みネギと、卵と、チャーシュー?」
大丈夫かな…
そう不安に思いながら、わたしは陣平くんがカゴに材料を入れていくところを見守る。
なんだか、はじめてのおつかいみたいで可愛い…
思わぬところで陣平くんの可愛さを見せつけられたわたしは内心悶えながら陣平くんの買い物を見届ける。
なんて幸せなの…
必要なものを買い、陣平くんの家に到着した。
「じゃあ俺の特製チャーハン、ミコトのために作ってやるから!」
「う、うん!楽しみ!」
そう言って意気込む陣平くんは、キッチンに立つと慣れない手つきで包丁を握った。
だ、大丈夫かなほんとに…
怪我しないでよ…?
と、キッチンの外から陣平くんを見守るわたし。
そんな心配をよそに、陣平くんは器用に玉ねぎを微塵切りにしていく。
手先が器用だもんな…陣平くん。
その気になって練習したら、わたしなんかよりも上達しそう。
そう思いながら陣平くんが必死にわたしのためにチャーハンを作るのを陰から応援しながら見つめていた。