第2章 初恋のはなし
木の影の隙間から、浜辺に誰かがいるのが見える。
目を凝らして見ていると、そこにいたのはわたしがよく知っている人だ。
「陣平くんと…お姉ちゃん…」
浜辺に並んで座ってる2人を見つけ、思わず咄嗟に木の影に隠れた。
シン…とした夜の海。
波の音に混じって、2人の会話が聞こえる。
「焼けたねー!陣平。今日一日で」
「…千速は、4年になってから突然焼き出したな。」
「まあな。来年からは遊べないし?
今ぐらい遊ばせてくれよ」
「…焼かない方が、俺は良かった」
陣平くんは少しだけ拗ねたように言った。
陣平くんのそんな声、聞きたくないのに。
わたしの足はその場から離れようとしない。
お姉ちゃんはそんな陣平くんを見て、優しい笑顔で笑って言う。
「…今日さ、あんたとミコトを見てて思ったよ。
陣平になら、ミコトを安心して任せられる。」
「…は。何だよソレ」
「あの子、両親も私も研二も存分に甘やかして育ったから、泣き虫だし不器用だし、これ!って決めたら突き進んでくる猪突猛進だし。
心配なんだよ。
私は来年半年は実家にも帰れないし。
我が妹ながら、どんどん可愛くなるからさ。
だから、変な男に騙されたら嫌だなーってずっと思ってた。」
「…俺だって嫌だよ」
俺にとっても大事な妹なんだよ。
と言いたげな陣平くんを見て、お姉ちゃんは豪快に笑った。
「あはは。
だからさ、陣平が幸せにしてやってくれよ。
陣平なら、私も大賛成。
…手ェ出すなってずっと言ってきたけど、陣平なら手ェ出してもいいぜ?」
「…ふざけんな。
俺は!…俺は、千速が」
「陣平。
私はあんたのこと、そう言う目で見たこと一度もないよ」
お姉ちゃんは静かにそう言って、砂浜を立ち上がり、その場を後にした。