第2章 初恋のはなし
「ねぇ、お姉ちゃん」
「んー?」
「お姉ちゃんは、好きな人いる?」
今まで、怖くて聞けなかった姉の恋愛話を、恐る恐る初めて聞いた。
「いない。前はいたけどな。
同じ大学の柔道部の先輩。
私、男臭い系が好きだから」
男臭い系…
陣平くんとは、ちょっと違う?
内心ホッとしていると、お姉ちゃんがわたしの頭を撫でながら言う。
「ミコトの恋の邪魔、したりしないからさ」
「…でも、陣平くんは、お姉ちゃんを…」
「年上の女が物珍しく映ってるだけだ。
きっと、そのうちミコトの魅力に気付くよ。」
姉の言うことはいつも正しかった。
何が起こっても、姉が大丈夫と言えば大丈夫なんだと思えた。
だけど、わたしはこの時、お姉ちゃんでも間違えることはあるんだなと思った。
陣平くんが、お姉ちゃんのこと好きなのは本物だよ。
わたしはずっとそんな陣平くんに恋をしてるんだから、間違いない。
「…なんか、トイレ行きたくなってきた。
行ってくるから、大人しく寝てろよ」
そう言って、お姉ちゃんはテントを1人で出て行った。
しばらく時間が経ったけど、お姉ちゃんは戻ってこない。
道に迷ってるのかな…?
心配になったわたしは、ゆっくりとテントから出てトイレがある浜辺の方へ向かった。