第14章 桜の木の下で ☆
なぜ顔を隠すのか分からず、俺は半ば強引にミコトが出した手を掴み、顔をまた覗き込んだ。
すると、涙で濡れたミコトの瞳と目が合った。
「泣いてんのか」
「…嬉しすぎて…」
ふと見ると、桜の花びらがミコトの頬に付いていて、俺は徐にそれを指で手に取った。
「花びらついてる」
それを言い訳にしてミコトの頬に手を添えると、俺はミコトの顔をゆっくりと俺の方へ向かせた。
「じんぺ…」
そして、俺の名前を呼ぼうとするミコトの唇を、白昼堂々、桜の木の下で奪った。
ゆっくりと離すと、ミコトは真っ赤な顔して俺を見ながら言う。
「見られちゃうよ?」
周りにいる花見客の目が気になるらしいミコトに、俺は全く反省せずもう一度顔を近づけて行く。
「見せつけてやろうぜ」
そう言って、ミコトがいいよ。と言う前にまたミコトの唇にキスをした。
「っ…ん…」
思わず声を漏らしたミコトが可愛い。
数秒キスした後、ゆっくりと唇を離しておでこをコツ…と俺の額と合わせ、瞳を見つめながら問う。
「聞きたいことってそれだけか?
千速のことだけ?」
「…もうひとつある」
まだ何かあんのか…
そう思っていると、ミコトはこの世で1番簡単な質問をした。
「わたしのこと、すき?」
答えは決まっている。
1+1よりも簡単な問題だ。
「好きだ。ミコト…」
好きと言った後にミコトの名前を呼ぶとより一層好きが増した。
もう一度だけとミコトにまたキスをすると、ミコトは恥ずかしそうに。けれどとても嬉しそうにそのキスを受け入れた。