第14章 桜の木の下で ☆
一瞬変な間があいた空気感を慌てて壊すように、ミコトがまた話し出した。
「あ…えっと、陣平くんって昔お姉ちゃんのこと好きだったでしょ?
…多分、わたしが高校生ぐらいまでは…
その後、どうしてお姉ちゃんじゃなくてわたしに付き合おうって言ったのかなと思って…」
あぁ。
俺が千速を好きなことは、ミコトにバレてたのか。
まぁ、そりゃそうか。
あの頃は千速をずっと目で追っていたしな。
「…警察学校行ったら、いつの間にか」
「そう…なんだ」
俺の返事が思った以上にそっけなかったのか、ミコトは下を向きながら笑って、それ以上何も言わない。
ダメだな。俺は。
言葉足らずでそんな顔させちまってる時点で。
そう思い直し、俺はミコトの肩を抱き寄せて言う。
「…警察学校行ったら、千速のこと何とも思わなくなってた。
…むしろ、離れるとミコトのことばっかり考えてた。
あの夏、お前に好きだと言われてから、ずっと。」
「…わたしのこと?」
「あぁ。でも多分、あの夏以前からずっとミコトのことを気になってたって今になって思う。
他の男にミコトのことやらしー目で見られるのも嫌だったし、お前が笑うと妙に嬉しくなったり。」
途中まで言って恥ずかしくなった俺は、照れ隠しにミコトの頭をわしゃわしゃと撫でた。
そして、ちゃんとミコトに伝えた。
「俺が守ってやりたいと思ったのは、ミコトだけ。
千速はなんつーか…憧れてた。それだけ」
しばらくミコトから返事は無く、黙ったまま気まずい空気が流れる。
「…なんだよ。この回答じゃ不服か?」
そう思いながら腕の中に抱き寄せてるミコトの顔を覗き込むと、ミコトは俺の目の前にパッと手のひらを出して俺の視界を奪った。
「見ちゃヤダ」
「あぁ?何でだよ」