第14章 桜の木の下で ☆
「え?陣平くん…?」
「これ、全部作るの大変だったろ…?」
普通、早起きして作ったの!なんて言うけど、ミコトはそんなこと一切言わない。
だけどきっと朝早くに起きて準備してくれてたに違いない。
俺のために、頑張ってキッチンに立つ姿が容易に想像できて、俺は抱きしめる力をぎゅっと強めた。
「お姉ちゃんにも手伝ってもらったよ?
トマトとモッツァレラチーズ、ピックに刺してもらったし」
「…それは、手伝ったとは言わねぇな…」
千速のお手伝いのレベルの低さに思わず苦笑いしながらミコトの髪を撫でた。
まあでも、千速らしいと言えば千速らしいな。
千速がこれをピックに刺しているところも容易に想像できて、思わずフッと笑い、今度はミコトが握ってくれたおにぎりに手を伸ばした。
俺の好きなしゃけが具に入っていて、こいつ何で俺の好みを全部把握しているんだ…と不思議に思いながらもそれを口に運んだ。
そんな俺に、ミコトが少し考えたあと言いにくそうに口を開いた。
「あのね…。陣平くんに聞きたいことがあるの」
「ん?何だ?」
その後、ミコトから発せられた質問は、俺が想像もしなかったことだった。
「お姉ちゃんのこと、好きな気持ちはいつ無くなったの?」
「え…」
俺が千速を好きな気持ちが無くなったのは…