第14章 桜の木の下で ☆
松田side
ミコトが花見に選んだ場所は、人気があまり多くないこじんまりとした公園の桜の木の下だった。
周りには花見をしている家族連れがちらほらいるぐらいだ。
「本当は目黒川沿いとかに行こうかなって思ってたんだけど、陣平くん人混み嫌いでしょ?」
そう言いながら、ミコトは楽しそうにレジャーシートを広げた。
「お前は、あんなにワガママだったのにいつの間にそんなに聞き分けいい子になったんだろうねぇ」
そんなこと言いながら、俺はミコトが敷いたレジャーシートに腰掛けた。
その隣にミコトが嬉しそうに俺に寄り添うように座るから、思わずミコトの華奢な肩に手を回した。
「陣平くん、意外と外でくっつくタイプだよね」
「なんだよ…意外とって」
お前だけだっての。
こんなに俺からベタベタくっつくのは。
そう思いながら、俺はミコトが並べた弁当を見た。
おにぎり、卵焼き、タコの形のウインナーにハンバーグ。
トマトとチーズに、ブロッコリーのエビ焼売
どれも美味そうなものばかりで、俺は思わず感心した声を上げる。
「うまそー…」
「陣平くんに喜んでもらいたくて作ったの!」
笑いながらそう言い、ミコトは俺に箸を手渡した。
どれから食べようか目移りしながら、俺は卵焼きを掴むと口に運ぶ。
甘い卵焼きではなく、出汁が効いた卵焼き。
俺の好きな味だ。
「俺、甘いのよりこっちの方が好き」
「ほんと?あとね、ハンバーグも自信作だから食べてみて?」
そう言われて、ハンバーグを箸で掴み口に運ぶと、中にチーズが入っていたらしく、これもまるで店で売ってるレベルで美味かった。
「これ、わざわざ自分で作ったのか?」
「うん!ちゃんとひき肉こねたよ?
チーズはキャンディーチーズを使ったの!」
俺が美味いと言うと嬉しそうに笑うミコトが愛しくて、俺は思わずミコトをぎゅっと抱きしめた。