第14章 桜の木の下で ☆
お弁当が完成したわたしは、手を合わせる陣平くんの横顔をじっと見ていた。
綺麗に手を合わせる彼を見て、お兄ちゃんが
陣平くんにとって、いかに大切な存在だったかを思い知らされる。
ゆっくりと目を開けた陣平くんは、わたしがじっと見つめているのに気付くと、わしゃわしゃと頭を撫でた。
「コラ。なーに見てんだ」
「陣平くんの横顔が、かっこよくて」
「…バカだな」
恥ずかしげもなくそう言うわたしを見て、陣平くんは顔を赤くして目を逸らした。
そのとき
「お!陣平ー!久しぶり」
「千速。相変わらず元気そうじゃねぇか」
お姉ちゃんが陣平くんに気付いて話しかけると、陣平くんも微笑みながらお姉ちゃんを見た。
そう言えば、陣平くんはいつからお姉ちゃんのことを好きじゃなくなって、いつからわたしのことを好きになったんだろう。
どう見てもお姉ちゃんの方が美人で、スタイルも良く、ノリもいい。
わたしが男だったら間違いなくお姉ちゃんを選ぶ。
それが気になって仕方ない。
陣平くんに、聞いたら答えてくれるかな…
そんなことを思いながら、じっと2人が会話しているのを見つめていると、陣平くんが腕時計を見て慌てて言う。
「お!ミコト。そろそろ行くか」
「そうだね。お弁当も出来たし、出かけよう!」
そう言って少し大きめのトートバッグに、お弁当が入った保冷バッグを持つと、わたしは母に言う。
「お母さん。今日わたし、陣平くんの家に泊まるね?」
陣平くんはきっと、
随分と直接的に報告するんだな…
そう思ったと思う。