第14章 桜の木の下で ☆
驚く母とミコト。
俺はもう覚悟を決めてもう一度ちゃんと報告した。
「ミコトさんと、お付き合いさせていただいています。
…中途半端な気持ちじゃなくて、真剣に。
ご挨拶が遅くなって、すみません。」
正直、警察官採用試験より緊張した。
が、さすが萩原のお袋さんだ。
俺の決死の報告とはつゆ知らず、あっさりとそれを受け入れる。
「あら。良かったわねぇ!ミコト!
松田くんのこと、ずっと好きだったものねぇ!」
「えっ!お母さんなんで知ってるの!?」
「私、あなたの母親よ?見ていればすぐわかるわよ!
ねぇ、松田くん。
せっかく来たんだし、研二にお線香でもあげていって?」
あっさり、というより思った以上に軽いノリで俺がミコトと付き合っていることを了承した萩原母。
そんな母に手を引かれ、言われるがまま俺は萩原家に足を踏み入れた。
懐かしい。
昔よく遊びに来ていたまんまだ。
「親父さんは…?」
「お父さんはゴルフ行ってていないの」
ミコトの言葉に、内心ホッとした俺。
さすがに親父さんに、ミコトが今日俺ん家に泊まります。とは簡単には言えないからだ。
仏間に通されると、萩原の写真と警察手帳が飾ってあった。
線香に火をつけ、両手を顔の前で合わせると、萩原に思いを馳せる。
萩原。
元気でやってるか?
そっちは寂しくねぇか?
まぁ、お前は人当たりもいいし、人から好かれるやつだ。
すっかり他の奴らと仲良くなっているに違いねえな。
ミコトと、付き合い始めたよ。
お前のおかげで今、幸せなんだ。俺は。