第13章 ニューイヤー ☆
松田side
ミコトと一緒に年を越した。
去年は良いことと悪いこと、半分が同じぐらいの量押し寄せて来た。
そんな一年だった。
もしも、萩原がまだ生きていたら、俺とミコトはきっとこんな関係にはなってねぇ。
それでも俺は、萩原に生きていて欲しかった。
奴がいなくなった喪失感は、こんな風にたまに物凄いスピードで襲ってくる。
そんな時、俺は決まってミコトの身体を抱き締める。
唐突に。なんの前触れもなく。
今も、道を歩くミコトの手を引いて、俺の腕の中に閉じ込めると、驚いた声を上げるミコト。
「わ…!どうしたの?」
「…さみい」
本当は、たまに怖くなる。
ミコトも萩原みてぇにいつか俺の前から消えるんじゃないかって。
こうしてずっと抱きしめて、俺の腕の閉じ込めていられればいいのにな。
俺がそんなことを思っているとは知らないミコトは、嬉しそうに俺の背中に腕を回した。
「もう少しで家だから、あとちょっとの我慢だよ」
そう言って笑ったミコトの頬にキスをして、俺はまた自宅に向かって歩みを進めた。
ミコトの手を引いて、カンカンとアパートの階段を鳴らして二階に上がり、家に入ると、ミコトが俺にぎゅっと抱きついてくる。
「?なんだよ」
「さむかったね!」
そう言いながら、ミコトは赤くなった鼻を見せて笑った。
その顔が可愛くて、不覚にもギュンと胸が締まった。
玄関の壁にミコトを追いやると、逃げられないように両手を掴んで、ゆっくりとミコトの唇を奪った。
思えば、別に逃げられなくする必要はないのに。
正真正銘の俺の彼女なんだから。
唇を離すと、俺はミコトの髪を撫でながら言う。
「ミコト、さっきも思ったけど唇冷たいな。」
「ん…だって寒かったし…
もっとキスして、あたためて?」
そんな可愛いワガママ、どこで覚えたんだ。
小さい頃言ってたワガママは、本当に妹のわがままだった癖に、いつの間にか俺に、女のワガママを言うようになってやがる。