第13章 ニューイヤー ☆
陣平くんは案の定、自分は言わないくせにという目でわたしを見たあと、ため息をついて言った。
「気が向いたら教えてやるよ。
眠いからそろそろ帰ろうぜ」
「今日は、陣平くんところに泊まっていいんでしょ?」
「俺はいいけど、親大丈夫か?」
「大丈夫!だってもう大学生だよ?」
そう言うと、陣平くんはわたしの手を引いて耳元で囁いた。
「じゃあ、帰ったらお前を食い初めだな」
「な!?」
「なーに赤くなってんだよ。ヘンタイ」
「じ、陣平くんでしょ?!」
もとは26歳だと言っても、わたしは恋愛ど素人だ。
男性経験も陣平くんしか知らない。
だからこんな風に挑発的なことを言われると、上手く返せなくていつも顔が赤くなる。
今年こそ、この余裕綽々の陣平くんに一矢報いたい。
密かにそんな野心を燃やしつつ、陣平くんに手を引かれて神社を出るとき、わたしはあ。と声を上げた。
「…あ!待って!帰る前にいちご飴食べたい!」
通りがかった通りの端に並ぶ屋台の中からいちご飴という文字を見つけ、わたしは陣平くんの袖をグイッと引く。
「こんな夜中に飴食べるって…太るぞ」
「…今日はお正月だからいいもん。」
そんな意味不明な言い訳をして陣平くんを見ると、彼ははあっとため息をついた後、屋台のおじさんに話しかけた。
「おっちゃん。一本」
「300円ね。どれでも好きなの選んでいいよ」
陣平くんがポケットから小銭を取り出し300円を払ってくれ、わたしは並べられたいちご飴の中から1番美味しそうな子を探す。
「どれがいいかなあ」
「どれもおんなじだって」
呆れた顔して笑いながら、陣平くんはわたしの頭をくしゃくしゃと撫でた。
結局、その中で1番大きいイチゴが刺さってる串を選び、わたしは大満足に神社を後にした。
イチゴ飴を口に含むと、甘くて思わず笑みがこぼれる。
「んっ…おいしい!」
「ほら、ちゃんと前見て歩けよ?
危ねぇから。」
わたしがいちご飴の美味しさに気を取られ、フラフラと歩いていると、陣平くんはすかさずわたしの手を引いて道路側を歩いてくれる。