第13章 ニューイヤー ☆
ゆっくり唇を離すと、陣平くんはわたしを見て笑いながら言った。
「今年もよろしくな」
「…こちらこそ!」
笑い返して、陣平くんにぎゅーっと抱きつくと、呆れながらもぽんぽんと髪を撫でてくれる。
「んじゃ、お参りして帰るぞ」
陣平くんに手を引かれ、わたしたちは人混みに紛れて賽銭箱の前に立った。
お賽銭を入れ、鈴を鳴らして手を合わせた。
そしてわたしは何度も何度も願う。
神様。
陣平くんとずっと一緒にいたいです。
わたしから、陣平くんをとらないで…
このままずっと、陣平くんが隣にいる未来をください。
縋るようにそう願った。
何度も。
ふと気付くと隣にいた陣平くんがわたしの方をちょっとだけ笑いながら見てた。
「お前のお願い、長すぎて神様もびっくりしてるだろうよ。
5円でどんだけお願いする気だよ」
あまりにも長いこと手を合わせてたわたしの手を、陣平くんが掴んでお参りの群れから抜け出した。
「陣平くんは、やけに早かったね」
「ミコトが遅いだけ。俺は普通。
…何をそんなに必死にお願いしてたんだよ」
そんな風に聞かれて、わたしは思わず言いそうになった。
わたしから陣平くんを取らないでくださいってお願いしたのを。
でも、人に願い事を言ったら叶わないって言うから咄嗟に口をつぐんだ。
「ひみつ。陣平くんは?」
「俺?俺も…内緒」
「えー、知りたい!陣平くんが何を願ったのか!」
自分は言おうとしないくせに、陣平くんのを知りたがるあたり、末っ子気質だなと思う。