第13章 ニューイヤー ☆
「今年は、色々あったな」
境内の石灯籠の端に腰掛けて、2人で寄り添ってカウントダウンを待っていると、ぽつりと、陣平くんが呟いた。
「そうだね…」
「萩がいなくなったことと、お前と付き合えたこと。
両極端だけど、俺にとってはトップツーの出来事」
そう言いながら、フッと笑う陣平くんが愛しくて、わたしは思わず彼の腕にぎゅっとしがみついた。
「わたしも、陣平くんと同じ気持ちだよ」
陣平くんが今何を考えていたのか、わかる。
お兄ちゃんを失った喪失感と、もがき苦しみながら掴んだ一握りの幸福感。
そのどちらも、決して忘れてはいけない大切な感情だ。
わたしと陣平くんはそれが分かり合える。
陣平くんがお兄ちゃんを想うとき、わたしも一緒に祈りを捧げることができる。
それだけで、怖いものなんてなかった。
「ま、来年もよろしく頼むわ。」
「もちろん!あ!あと…10分だよ!」
陣平くんの発言にハッとしたわたしは時計を確認すると、あと10分で年越しだ。
しばらくすると、神社でもカウントダウンが始まり、人々は新しい年に期待と喜びで胸を膨らませている。
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ハッピーニューイヤー
そう周りが騒ぐ中、それと同時に陣平くんがわたしの唇を奪った。
わたしも陣平くんも、あけましておめでとうは言えないから、悲しい気持ちにならないよう、キスで新年を迎えてくれた。
陣平くんの、優しさが詰まったキスだった。
そして、ちゃんとわたしの身体は新年を迎えた今も、ここにある。