第13章 ニューイヤー ☆
「ミコト?」
「えっ!?どうしたの?」
「いや、ボーッとしてたみてぇだから。
考え事か?」
「んーん。陣平くんと初詣行くの、久しぶりだね。」
昔はよくお姉ちゃん、お兄ちゃんと一緒に4人で初詣に行って、甘酒を飲んで帰ってた。
いつもわたしの手を引いていたのはお兄ちゃんだった。
そして陣平くんは、お姉ちゃんのほうを手を繋ぎたそうにチラチラ見ていたのをよく覚えてる。
そんなわたしたちが、今や手を繋いで寄り添って、一緒に白い息を吐きながら夜の道を歩いてるのだから、奇跡以外の何者でも無い。
「それにしても、お前手ェあったかいな。」
「そう?陣平くんの手は大きいね」
「当たり前だろ?男なんだから」
そう言いながら、陣平くんは繋いだわたしの手を自分のコートのポケットに入れた。
変なの。寒いはずなのに、陣平くんと手を繋ぐと心まであったかくなる。
幸せな気持ちを噛み締めながら、初詣の神社に着いた。
神社は人がたくさん。
まっすぐ歩くのも難しいぐらいだ。
前から歩いて来た人と肩がぶつかり、わたしがよろけると、陣平くんは咄嗟にわたしの肩を抱き寄せてくれる。
「くっついてろよ。お前ちっせぇーから」
こんな風に大事にされると、ああ。陣平くんの彼女になれたんだ…わたし。
と、再認識する。
「じゃあ、陣平くんにぎゅってくっついてる!」
「バァカ。歩きにくいっつーの」
そんな馬鹿みたいなイチャイチャも、今年最後だ。
あと数分で、新しい年を陣平くんと生きていく。
たぶん…
年が変わる瞬間に、わたしの身体が消えませんように。
よくあるじゃない?
タイムスリップものの創作で、0時になった瞬間に元の時代に戻るの。
来年も、このまま陣平くんの彼女でいたい。
そしてその次の年、また次の年を過ごして、彼を救いたい。
わたしには、そう願うことしかできない。