第2章 初恋のはなし
「陣平くん、わたしもう大丈夫だから、お兄ちゃん達と遊んできていいよ?」
「バーカ。遠慮してんじゃねえよ。
1人じゃ寂しいだろ?」
くしゃ…と髪を撫でるのは、陣平くんの癖だ。
こんな風に髪を撫でる女の子は、わたしだけがいい。
お姉ちゃんにも、他の女の子にもしないで?
なんて、思ったところでしょうがないのに。
「陣平くんは、優しいね」
「…誰にでも優しいわけじゃねぇよ」
そんな思わせぶりな事言わないでよ。
わたしが小3のときからずっと陣平くんが好きってこと、気づいてないの?
もうかれこれ8年だよ?
中学生時代もずっと陣平くんに片想い
花の女子高生なのに、彼氏も作らずまだ懲りずに片想い
陣平くんの事を嫌いになる要素が無いんだもん。
ずっと、こうして優しくしてくれるから、どうしても諦めきれずに想いはどんどん積もっていく。
「…わたしが陣平くんの妹なら、お姉ちゃんは陣平くんの姉?」
試すような言葉がわたしの口からこぼれ落ちた。
陣平くんは少し笑った後、わたしに言った。
「あんな姉貴、いらねぇな」
ほら…
お姉ちゃんのことは、女として見てるくせに。
心の中で、陣平くんに向かってバカと言いながら、わたしは隣にいる陣平くんの顔をじっと見てた。
わたしのこと、好きになって
わたしのこと、好きって言って
お姉ちゃんじゃなくて、わたしを見て
心の中で何度もそう唱えたけれど、儚くも言葉には出来なかった。