第2章 初恋のはなし
ぱち…と目を覚ましたのは、ビーチのパラソルの下だった。
「え…」
今自分が置かれている状況が分からず、思わず言葉を溢すと、隣からポカリスウェットの缶が伸びてきてわたしの頬に当たった。
「つめたっ!」
「熱中症だってよ。」
隣にいたのは、陣平くんだった。
「熱中症…」
「お前なあ、もともとほっせーのに、それ以上痩せてどうすんだよ。
千速に聞いたぞ。最近飯全然食べてなかったって」
そう言って、陣平くんは海の方へ目を向けた。
わたしも同じように見ると、お兄ちゃんとお姉ちゃんが海で水鉄砲を持って遊んでる。
まるで兄弟に見えないその2人を見て、ビーチにいる人たちは、口々に
「あそこのカップル、美男美女だな」
「お似合い!!」
なんて言ってる。
紛れもなくあの2人は兄弟なの…
心の中でそんなツッコミをしながら、陣平くんにもらったポカリの缶のプルタブに手をかけた。
その時、陣平くんがその缶をわたしからヒョイと奪い、片手でプシュ…と缶を開けた。
「爪、せっかく可愛くしてんのに、剥げたら嫌だろ」
これ、ジェルネイルだから剥げないよ
そう言おうと思ったけどやめた。
海に行くからとネイリストさんにデザインしてもらったネイルが、わたしも妙に可愛く見えた。
陣平くんが可愛いって言ってくれるものは、途端に世界で一番のお気に入りになる。
惚れたもん負けってまさにこのことだ。