第12章 大人の階段 ☆
中に入っていたのは少し大きめの箱。
リボンを解いて開けてみると、ピンクゴールド文字盤の革ベルトの時計が入っていた。
かち…かち…と秒針を刻む音がして、わたしは思わず泣きそうになる。
本当に、陣平くんと時を刻んでる。
夢じゃない。現実だ。
針が進むたびに、そう思えた。
「…医者は、時間管理が大事だと聞いたことがある。
俺があげた時計がお前の腕で時間を刻むのが、なんか良いなと思ったんだよ」
陣平くんはそう言って、初めて出会ったときのわたしが恋に落ちたあの笑顔で言った。
「ありがとう。
…一生大切にするね」
涙が滲んで陣平くんの笑顔が上手く見えない。
この笑顔を、あと何度数えることができるだろう。
この人を救える未来が必ず来ますように。
心底そう思った。