第12章 大人の階段 ☆
陣平くんを好きな理由…
初めて出会ったあの日から、好き!って思ってるんだから、一目惚れ?
小学生の頃の一目惚れを26まで引きずることなんてある?
もっと違う理由があるはずなのに、うまく言葉にならない。
「…何でって…
わかんない」
「はあ?」
「わかんないけど!
陣平くんのこと考えると苦しかったり嬉しかったり幸せだったり。
心が忙しい。
というか、全部好き。嫌いなところひとつもない。」
と、まとまりのないことを言うわたしを見て、陣平くんは優しく笑った。
「まあ…言わんとしてる事はわかる気もする。」
「陣平くんは?
わたしのこと、どうして好きなの?」
今度はわたしが全く同じことを聞き返した。
陣平くんがわたしを好きになる要素が全然見当たらなかったから。
陣平くんはしばらく考えた後、目を逸らしながら言った。
照れてる時の癖だ。
「…癒されるから」
「え…」
「お前がいるだけで、明日も頑張ろうと思える。
お前が笑うと、疲れが全部吹き飛ぶ。
お前を抱きしめてる間は、他のこと全部忘れられる。
あと、お前の作る飯が美味い。
…言ってて、恥ずかしくなってきたぜ…」
顔を赤くしながら、恥ずかしそうに口を手で押さえて目を逸らす陣平くん。
なにそれ…全部わたしにとって最高の褒め言葉だよ。
素直じゃない陣平くんが、恥を捨ててものすごく頑張ってこのことを伝えてくれてるんだと思うと、愛しさで胸がキュンとなる。
「でもまあ、お前とこれからも一緒の時間を過ごして行きてぇと思うよ。
だから、これ。誕生日プレゼント」
ただでさえもうキュンとしすぎて心臓が壊れそうなのに、陣平くんはさらにわたしに追い討ちをかけてくる。
「え??ワンピースもらったよ??」
「誕生日プレゼントは一個って決まりはないだろ?」
そう言われ、陣平くんが差し出した紙袋を受け取り、中身を出した。