第12章 大人の階段 ☆
「千速だな。千速がお前に飲ませてたんだろ?」
「はい??」
「ったく。しょうがねぇな、あいつ。」
お、お姉ちゃんのせいになってる!
と、わたしは慌てて否定する。
「いやいや!違うよ??
ワインは…興味があって、知識だけはあるの」
まあ流石に、実は未来から来たの。なんて信じるはずもないし思いつきもしないだろうけど、一応誤魔化したわたし。
「…まあいいや。
誕生日だし、シャンパン開けようぜ」
「シャンパン大好………きになりたい!!」
「…あっそう」
危ない。
完全に舞い上がって我を忘れ、思わずボロを出しそう。
落ち着け、自分。と、何度か深呼吸をしたあと、気を取り直して自分のハタチの誕生日会がスタートした。
運ばれてくる料理はどれも絶品。
口に運ぶ度に、んんー!と至福の顔をするわたしを見て、陣平くんが笑う。
「ほんと、幸せそうな顔して食うよな」
「美味しいは顔に出るの。
陣平くんも、わたしの作ったカレー食べてる時、すっごく幸せそうな顔してるよ?
…わたし、それ見るの大好き」
そう言って、すぐに何だか恥ずかしくなってきたわたしは慌てて白ワインを身体に流し込む。
陣平くんは少し黙った後、頬杖をつきながら徐に口を開いた。
「…お前はさあ、何で俺のこと好きなわけ?」
「え?」
「そういや、今まで聞いたこと無かったと思って」
そういえば、言ったこともないし考えたこともなかった。