第2章 初恋のはなし
「なに?どういうこと?」
「…ビーチにいる男が何人も、さっきからチラチラミコトの事を見てんだよ。
ったく。やらしー目でジロジロ見やがって。
ぶん殴ってやりてぇぜ」
そう言いながら、陣平くんはわたしの頬をそのまま撫でた。
それは…どういうこと?
もしかして、わたしが他の男の人に見られるのが嫌ってこと?
それは、わたしが陣平くんにとって特別だからなの?
そんな淡い期待を抱きながら、彼が次にどんな言葉をくれるのか、固唾を飲んで待っていた。
だけど、陣平くんは相変わらず正直なフリして残酷な事を言う。
「お前は俺の大事な妹同然なんだから。
他の男にやらしー目で見られるとムカつくんだよ」
妹…同然?
まだわたしは陣平くんに1人の女の子として見てもらってないの?
お姉ちゃんのことは、姉なんて一度も思った事ないくせに。
頭を硬いもので殴られたみたいにグラグラする。
陣平くんの言葉ひとつで、わたしは一気に谷底に突き落とされる。
照りつける灼熱の太陽が、わたしの心を焦がしてもう跡形も無くなるぐらい塵と化した気分。
視界が揺れて、ゆっくりわたしは意識を失った。
陣平くんが何度もわたしの名前を呼ぶのを、薄れゆく意識の中聞いていた。