第11章 ハタチになる日
松田side
ミコトの誕生日をなぜ覚えていたかと言うと、単純に覚えやすかったからだ。
小学生の頃、ミコトは俺に言った。
「陣平くん!わたしの誕生日、何月何日が当ててみて?」
「あー?さあ?1月1日とか?」
「それじゃお正月だよ!」
そんな、365分の1が当たるわけねぇだろと、子供ながらに呆れた記憶がある。
「もお!正解は12月12日!
いちに、いちに、ひよこさん!って覚えてね!」
「ひよこさん??」
「ひよこさんって、いちに、いちにって掛け声かけながら歩いてそうじゃない?」
バカだ。こいつ。
正直そう思ったものの、このエピソードは忘れられるはずもなく。
ミコトと付き合うことになった11月の萩原との別れの日、その3日後に俺は12月12日の休みをとった。
そして、今日をどうやって祝うか?1ヶ月間ずっと考えていた。
結局頭に浮かんだのは、良いところで良いもん食って、良いとこに泊まって夜景を見ながら酒でも飲む。
なんて、ベタ中のベタなことだった。
どっかのドラマで見るような、誕生日の祝い方だ。
偉そうなこと言っているが、俺は好きな女の誕生日を祝うのは初めてだった。