第11章 ハタチになる日
そして、いつものわしゃわしゃと撫でる撫で方じゃなくて、大切そうにゆっくりわたしの髪を撫でた。
その手のひらが温かくて、わたしは本音がボロボロ溢れてく。
「今日、会えないって思ってた。
会えなくてもよかったの。
だって、陣平くんの彼女になれただけで幸せだから。
これ以上幸せになったら怖くて…全部無かったことになりそうで怖かった。
っでも、嬉しい…怖いけど嬉しいよ…」
支離滅裂なことをえぐえぐと涙を啜りながら言うわたしに、陣平くんは困ったように笑った。
「…何を言ってるのかさっぱりわからねぇけど。
無かったことになんかならねぇから。
本当は飯食う時にサプライズしようと思ってたのに、計画が台無しだぜ」
「ご、ごめん…」
そう言うと、陣平くんがゆっくりわたしの身体を離した。
そして視線が重なったあと、唇がゆっくりと近づいてきてわたしの上に重なった。
誕生日プレゼントのような、陣平くんのキスだ。
「…ミコト。
誕生日、おめでとう。
ハタチの誕生日を、俺に祝わせてくれてサンキューな。」
陣平くんがわたしの大好きな笑顔で笑う。
この笑顔も、わたしへの誕生日プレゼントみたいだ。
「っ…うぅ〜〜〜」
「だから、泣くなって」
「陣平くん、大好きぃ…っ」
「知ってるって。バァカ」
わたしにとって、二度目のハタチの誕生日
一度目が霞むぐらいの奇跡の誕生日。
この時間が本物であるよう、強く願った。