第11章 ハタチになる日
そう思いながら身体にバスタオルを巻いてバスルームを出ると、ピンクのシフォン素材のワンピースがかけてあるのが目に飛び込んで来た。
「??」
誰の?これ??
めちゃくちゃ可愛いワンピース。
明らかにわたしのでは無いその服を見て、恐る恐る脱衣所のドアを開くと、身体にタオルを巻いたままひょこっと顔を出した。
そして、窓の外の東都タワーを眺めてる陣平くんに恐る恐る話しかける。
「陣平くーん…
あの…なんか、わたしのじゃない服が脱衣所にかかってるんだけど…」
「あぁ、それお前のだから」
「へ?」
突然言われた陣平くんの言葉、意味がわからずわたしは首を傾げて聞き返す。
わたしのじゃないよ???
そう思っていると、陣平くんはさも当たり前のように続けた。
「それに着替えて、早く飯食いに行くぞ。」
「えぇ…いや、このワンピわたしのじゃないよ??」
陣平くんの本心が全く読めず、ひたすらに首を傾げていると、そんなわたしに痺れを切らした陣平くんが突然頬に怒りマーク付けながらわたしをジロッと睨んだ。
「…あぁあ!もう!!
お前、今日誕生日だろ!?」
「…え?」
「飯食うまで内緒にしようと思ってたのに、お前鈍いうえに、どうして?なんで?って子供か!?
っていうか、頭良いんだから察しろよ!!」
ガーーッと怒り出す陣平くんを、ぽかんとした顔で見ながら、わたしはまさかの展開に頭がついていかない。
「…誕生日、何で知ってるの?」
「昔話してただろ」
昔って、何年も前だよ…?
覚えてたの?
「誕生日だから、会いに来てくれたの?」
「そうだよ。悪いか?」
そう言って陣平くんは不服そうに目を逸らした。
「誕生日だから、この服も買ってくれたの?」
「…だから、そう言ってるだろ?
お前のために俺が買ったんだから、それはお前のなんだよ!わかったか?バカ!」
乱暴にそう言うくせに、その行動には優しさが溢れていて、わたしの目から思わず涙がこぼれた。
「っ…バカだもん…!」
「…って、泣くのかよ。
んっとにしょーがねぇやつだな」
ぶっきらぼうにそう言いながらも、陣平くんはわたしの手を引いて自分の腕の中に閉じ込めた。