第11章 ハタチになる日
…ちょっと待って。
わたし、今日解剖実習の帰りなんだけど!!
慌てて自分の身体をふんふん確認すると、実習で使ったホルマリンやご検体の匂いが香る。
やばい!わたし、今超絶臭い!
そう思い、わたしは思わず身を乗り出してタクシーの運転手に行き先を変更する。
「すみません!
米花町4丁目に変更で!」
自分の自宅の住所を伝えようとするわたしを、陣平くんが慌てて止める。
「はあ!?何勝手に行き先変更してんだよ!」
「だって!解剖実習のせいで臭いでしょ?!わたし!
シャワー浴びたい!
しかもジーンズだよ?!
米花センタービルにジーンズ履いていけない!」
「ったく…それなら、予定通り米花センタービルで良いって。
変更なし。そのまま行ってください」
行き先が定まらず狼狽えるタクシーの運転手にそう言うと、陣平くんはまったく…と言いながらため息をついた。
「ちょ、ちょっと陣平くんわたしの話聞いてた?!」
「あーもう!
米花センタービルの中にあるホテルの部屋取ってあるから!
そこでシャワー浴びればいいだろ?!」
「??なに?どういうこと?」
未だに陣平くんの意図がわからずに首を傾げるわたしをみて、彼は先ほどよりも大きなため息をついて言った。
「…仕事で急遽泊まる用事が出来たんだよ」
それだけ言うと、まるで「もうこれ以上聞くなよ」と言う風に、ふいっとまた窓の外を眺める陣平くん。
警察(しかも爆発物処理班)の仕事でホテルに泊まるって、意味がわからないんですけど!
結局陣平くんにはぐらかされたまま、わたしと陣平くんを乗せたタクシーは米花センタービルに到着した。