第11章 ハタチになる日
わたしは慌てて彼に駆け寄る。
「じ、陣平くん?どうしたの?
誰かと待ち合わせ?」
この駅は、東都大学の最寄り駅。
わたし以外にここで待ち合わせする人いるっけ?
わたしは今日何の約束もしていないし。
彼がなぜここにいるのか全くわからないまま首を傾げていると、陣平くんは頭を掻きながらサングラスを外した。
「…早上がりしたから。飯食いに行こうぜ」
「?わたしに会いにきたの?」
「他に誰がいんだよ」
何も分かっていないわたしを呆れた目で見ながら、陣平くんがわたしの髪をくしゃくしゃに撫でた。
今日は会えないと思っていたから、気まぐれでもこうして来てくれた。
それが嬉しすぎてつい涙が出そうになる。
「電話くれればよかったのに。
わざわざここで待たなくても…」
「まぁ…いいじゃねぇか。行くぞ」
「うん!何食べる?牛丼?ラーメン?
あ、ココイチでカレー食べる??
でも気分は豚骨醤油…」
いつもの陣平くんとの外食のラインナップを並べ、今日はラーメンの気分かなぁ…なんて一人で喋っていると、陣平くんはわたしの手を引いてタクシーを捕まえた。
「ほら、乗るぞ」
「え?!ラーメンならすぐ近くに美味しい店知ってるよ?」
そう言うわたしを無理矢理タクシーに押し込めると、陣平くんは運転手に行き先を告げる。
「米花センタービルまで」
べ、米花センタービル?!
ラーメンじゃないの?
カレーでもないの!?
あそこ、たしか高級レストランしか入ってないよね?!
焦りながら陣平くんを見るわたしを、一切無視の陣平くんは、シートに背中を預けたまま車の外の景色を見ながらわたしの手を握った。