第2章 初恋のはなし
小さい頃はよく陣平くんに手を引っ張られながら家まで帰ったことはあったけど、久しぶりに繋いだ手は、すっかり男の人の手になってた。
陣平くんに手を引っ張られながら海まで砂浜を歩いた。
途中、陣平くんにかけられたパーカーが肩から落ちてヒラリとお兄ちゃん達が座るパラソルの方へ飛んで行き、わたしは水着のみの姿に戻る。
陣平くんはわたしの方を一度も振り返らずに、ただわたしの手を引いて海に入ると、わたしの上からかぱっと浮き輪を被せた。
「ったく。
どうしようもねぇな、お前の兄貴と姉貴。
妹溺愛しすぎ。
シスコンブラザーズって呼ぶことにするぜ」
「…陣平くんが、悪いんじゃん」
「あー?」
「そんなに、似合ってなかった?
わたし、めちゃくちゃ時間かけて水着選んで、何なら3キロダイエットもしたのに」
それだけ言うと、じわっと涙が出てくる。
三兄弟の末っ子というのはこうも泣き虫だろうか。
泣くのを必死で我慢してるわたしに、陣平くんはパシャ…と海の水を顔にかけた。
「うぷっ!」
「フッ。変な顔」
「ひっ!ひどい!!陣平くんのバカ!!」
マスカラをウォータープルーフにしていて良かった。
そう思いながら、顔にかかった水を手で拭っていると、陣平くんの手が伸びてきて、わたしの頬についた雫を手のひらで拭った。
陣平くんの手のひらの温度がわたしの頬で溶けて、胸がドキッと高鳴る。
「周り見てみろよ。」
「まわり?」
陣平くんの言った意味が分からず、言われた通りキョロキョロと辺りを見渡すけど、やっぱり意味が分からない。