第11章 ハタチになる日
「お、終わった…!マジでキツかった…初実習…」
授業が終わり、帰るために正門に向かっている時、アユが安堵のため息をついた。
わたしも初めての解剖実習のとき、めちゃくちゃ疲れた記憶がある。
懐かしいな…
「お疲れ!そのうち慣れるよ、きっと!」
そう言いながらアユに先ほど自販機で買ったコーヒーを渡すと、アユは不思議そうにわたしを見てくる。
「ミコト、めちゃくちゃ手慣れてたね。
他の子がわたわたする中、平気でメス入れてたし…」
「えっ?!そ、そう??」
当たり前だ。
わたしは医学部を卒業してから外科の研修医として2年も働いていたんだから。
オペに執刀したことだってある。
流石に第一執刀医ではなかったけど、それでも慣れるほどには経験を積んでる。
「そうだよー!なんか、すでに何人も切ってます。って感じだったー!」
「ま、まさかあ!考えすぎだよ」
ドンピシャでアユに当てられたわたしは内心焦りながらもあははと空返事をして笑った。
この先、病院実習が始まったらそれこそめちゃくちゃ気を使うんだろうな…
わたしはあくまでも学生…
医学部の学生…
自分に何度も何度も暗示をかけないと、ついうっかりボロが出そうになる。