第2章 初恋のはなし
陣平くんはかけていたサングラスを少しずらしながらわたしを凝視した。
そして、その後ふいっと顔を背けながら何かをわたしに向かって投げながら言う。
「ミコト、これ着てろ」
バサッとわたしの方に投げてきたのは陣平くんのパーカー。
「え…」
「いいから早く着ろって。
…そんなもん見せんじゃねぇよ」
水着姿を見せずに、上からパーカー着てろってこと?
どうして?
そんなに似合ってなかった?
あんなに考えて考えて買ったこの水着が、なんだかとてもチープに見えた。
泣きそうになるわたしを見て、お姉ちゃんが陣平くんに食ってかかる。
「おいコラ陣平、私の可愛い妹の水着姿を見てその態度は無いだろ?」
「うるせーよ。ミコトにはまだ早いって」
「テメェ、ぶん殴る!」
そう言って陣平くんにゲンコツを喰らわそうとするお姉ちゃんを、傍観していたお兄ちゃんが笑いながら止めた。
そして、わたしの方を見ながらお兄ちゃんがウインクを飛ばす。
「まあまあ。せっかく海に来てんのに喧嘩すんなよ。
物凄く可愛いよ、ミコト」
だから!お兄ちゃんに可愛いって言われてもなんの意味もないの!!
むーーっとまた口を尖らせてしょぼくれているわたしを見て、姉と兄が同時に陣平くんを睨む。
「陣平ちゃーん。俺の可愛い妹を泣かさないでくれる?」
「陣平!はやく海入ってこい。ミコトも連れて!」
萩原家のアイドルであるわたしを溺愛する2人は、陣平くんを取り囲み、お兄ちゃんは笑顔で、お姉ちゃんは鋭い目つきで圧をかける。
「…わーったよ。
ミコト、行くぞ」
観念した陣平くんは、わたしの手を取った。