第10章 愛してるなんて ☆
松田side
俺が観覧車に乗ると言った瞬間、ミコトは途端に顔を真っ青にしながら激しく取り乱した。
どうしたんだ…
まるで、萩が死んだ時みたいに動揺している。
何か、嫌な出来事でも思い出したみたいだ。
そう思いながらも、ミコトを落ち着かせようと抱きしめ、近くのベンチに2人で腰を下ろした。
ミコトの肩を抱き寄せてやると、ぎゅ…と俺にしがみついたまま、カタカタと身体を震わせている。
「大丈夫だ」
そう言って髪を撫でると、ミコトは安心したように目を閉じた。
何が大丈夫なのか何の信憑性も無かったが、そう言ってやるとミコトの身体の震えもだんだん落ち着いて来た。
「今日はもう帰るか。家まで送る」
そう言って髪を撫でてやると、ミコトは俺の身体にぎゅっとしがみついたまま言った。
「…陣平くん。
今日、陣平くんとこに泊まっちゃだめ?」
「?別に構わねぇけど。
…どうした?」
「…陣平くんと1秒も離れたくない…」
涙を目にいっぱい溜めてそう言いながら俺をじっと見てくるミコト。
本当に、どうしたって言うんだ。
原因が全くわからず困惑しながらも、俺はミコトの要望を叶えることにした。
「わかった。
じゃあ、俺んちに帰るか」
そう言いながらミコトの手を握って立ち上がると、ミコトはまるで小さい子供みたいに俺に手を引かれてとぼとぼと歩き出した。