第10章 愛してるなんて ☆
1日が終わるのは早いもので、気付いたら夕暮れ時になっていた。
「たくさん乗ったねー!
ジェットコースターに、お化け屋敷にフリーホール!」
「お前が絶叫系好きで良かったよ。
やっぱ遊園地と言えば絶叫系だからな」
「えー?!遊園地と言えばお化け屋敷でしょ?
陣平くん全然怖がってなくて、つまんなかった。」
ぶーと口を尖らせながら言うわたし。
さっきお化け屋敷に入ったわたしたちだけど、驚くのは毎回わたし。
陣平くんは1人涼しい顔して、わたしがいちいち驚くのを見て笑ってた。
陣平くんが怖がるところ、見たかったのにな…
彼のどんな一面も逃さず心のシャッターに刻み込みたいわたしは、怖がる彼を見れなくて残念な気持ちのまま隣を歩いてた。
「もう大体乗ったか」
「そうだね。じゃあ帰ろっか?」
そう言って、出口に向かって歩き出そうと足を踏み出したとき、陣平くんがわたしの手を引いた。
「待った、まだ乗ってねぇのあった」
「?どれ?」
「あれ」
そう言って陣平くんが指差したのは観覧車。
わたしの心臓が嫌な音を立ててドクンッと大きく跳ねた。
陣平くんが、観覧車に仕掛けられた爆弾の解除中に殉職することを思い出し、わたしはその場で大きく取り乱した。
「やだ!絶対いや!乗らない!」
「ミコト…?」
「やだっ…陣平くん…乗らないで!いやぁあ!」
こんなに幸せで、
こんなに陣平くんと濃い時間を過ごしているのに
陣平くんがいなくなるあの悪夢の日がだんだん近づいて来てるような気がして怖かった。
いやだ。
陣平くんがいなくなるなんて、もういや…
ずっと一緒にいてよ…
ずっとそばにいて?
せっかく恋人同士になれたのに、あの日のことがフラッシュバックする。
「いや…陣平くん…行かないで…」
泣きながら、はあはあと呼吸を乱すわたしを、陣平くんがぎゅ…っと抱きしめた。
「ここにいる」
「…っ…ずっとそばにいてよ…」
「いるから。ずっと」
そう言って、何度も髪を撫でてくれた。
まるでお兄ちゃんのお葬式の時に抱きしめてくれた時のように、何度も。