第10章 愛してるなんて ☆
お前の行きたいとこ。という約束が1ミリも通らないことに、わたしはぶーっと顔を膨らせて言う。
「わたしの行きたいとこって言ったじゃん…」
「俺にあんなキラキラキラキラキラキラしたところ行けってのか?!」
まあ確かに、どう考えても陣平くんには似合わない。
陣平くんがカチューシャつけてはしゃいでくれるとは思えない。
だけど、わたしにはどうしても行きたい理由があった。
「…最後に、お兄ちゃんと行けなかったから」
下を向いてそうぽつりと溢すわたし。
お兄ちゃんを出すなんて、少しズルかったかな?
少しだけ罪悪感を覚えるわたしに、陣平くんは優しく言った。
「しゃあねぇな。行くか、トロピカルランド」
「ほんと?」
「お前の行きたいとこって言ってたしな。」
背に腹はかえられん。と言うようにため息をこぼす陣平くんをよそに、わたしはすでに今度の土曜日が楽しみで仕方ない。
何着ていこうかな!
どうやって回ろう?
雨降ったらどうしようかな…
なんて、たかがデートにこんなにウキウキするのはいつぶりだろう。
きっと、足繁く陣平くんのアパートに通っていた過去以来だ。
「ふふっ」
「?何笑ってんだよ」
「なんにも?土曜日楽しみだなー!」
やっぱり、わたしに幸せやドキドキやときめきをくれるのは、陣平くんだけだね。
後にも先にも、陣平くんだけ。