第10章 愛してるなんて ☆
テストの手応えはまあまあ。
まぁ、一応一度医者になった身だから、こんなところで落第してちゃこの数年何やってたの?って話になるけど。
テストが終わり、講義室を出ようとした時アユがわたしにニヤニヤしながら言う。
「そう言えばさ、昨日と同じ服だね?」
「えっ!!!」
バレバレなわたしの反応を、アユは面白がって茶化してくる。
「やっぱりウワサの陣平くんに食べられちゃったかー?」
「たっ!食べられてないよ!まだ…」
昨日結局最後までできなかったんだから…
と、昨日のことを思い出してかああっと顔が熱くなる。
「まあでも、その感じじゃ順調に幸せそうだね。
新出くんは失恋かー!」
「もー。まだわたしのこと好きって決まったわけじゃないでしょ?」
呆れてアユにそんなこと言いながらも、思った。
26歳の彼はわたしに告白するのだけど、もしこのまま、わたしと陣平くんがずっと付き合っていたら、きっと新出くんには26歳になるよりも前に別の彼女が出来る。
わたしのこと、早々に諦めるってことになるから。
そうなると、新出くんとその彼女がもし結婚してふたりの間にできる子供は、本来生まれないはずの子になるということ。
わたしがいた未来が、微妙に変わってしまうんだろうか…
陣平くんを救うということは、逆に本来生きてるはずの人を殺してしまうということになるんだろうか…
恋は盲目というのは本当で、わたしはそれでも良いと思ってしまう。
陣平くんがいなくなるぐらいなら、誰かが身代わりになればいいと思う。
医者のくせに、その信念を曲げてでも、陣平くんだけは救いたい。
必ず…