第10章 愛してるなんて ☆
陣平くんのアパートから急いで大学に向かうと、2限にギリギリ間に合った。
「あぶなー!単位落とすとこだった…」
急いで来たせいで上がった息をふーっと吐いて整えながら、わたしは講義室に入った。
「あ!ミコトー!」
すでにアユが席に座っていて、アユの前には新出くんとその友達が着席している。
わたしはアユの隣に向かった。
「テストの日に寝坊なんて珍しいね」
「まぁ、ちょっとね…」
そう言いながら、前に座る新出くんの背中をトントンと叩いた。
首を傾げながら後ろを振り返った新出くんに、わたしは両手を顔の前で合わせてごめんなさいのポーズをしながら言う。
「起こしてくれて、ありがと。
ほんと助かったよ」
「いや。間に合って良かったね。」
そんなわたしたちのやり取りを見て、アユがニヤニヤしながら言う。
「あれ?2人は実はそういう仲?」
「ちがっ…」
慌てて違うよ!と否定しようとした時、それに被せるように新出くんが笑顔で否定した。
「違いますよ。
…それに、萩原さんには恋人がいるみたいだし」
そう言う新出くんの顔がほんの少し切なそうに見えた時、ちょうどテスト監督の教授が講義室に入ってきて、テストが始まった。