第9章 俺のだ ☆
お風呂の給湯器の音が鳴り、2人はピタ…と動きを止めた。
「…風呂、沸いたな」
「そ、そうだね」
気まずそうにゆっくりと身体を離しながら、陣平くんが言う。
「先入れよ。
俺は後からでいいから」
「う、うん。じゃあ先に…」
昔みたいに、一緒に入ろうなんてとても言えなくて、わたしは逃げるようにお風呂場に向かった。
お風呂場に入ってまずメイクを落とし、湯船に浸かるとさっきのキスがぱっと脳内に蘇る。
わたし…本当に陣平くんの彼女なんだ…
ずっと夢見ていたこのひとときが、終わってほしく無い。
明日朝起きて、未来に戻っていたらどうしよう…
ぶくぶくとお風呂に顔をつけて悶々と考えていると、だんだんのぼせてきたわたしは、慌てて身体や髪をピカピカに洗うと、恐る恐るお風呂場のドアを開けた。
前にはバスタオルと、陣平くんのスウェットがおいてある。
陣平くんの匂いがするスウェットをくんくん嗅いでいるわたしは、過去から少しも成長してないな…
陣平くんのスウェットに袖を通すと、ブカブカで膝上まで丈がある。
そしてふと鏡を見ると、すっぴんになったわたしが鏡映った。
「…待って、すっぴんじゃん!!」
19歳のすっぴんなんて、何も焦る必要ないはずなのに、中身は26歳のわたしは思わずすっぴんに抵抗を見せる。
だめだ…
すっぴん、コンビニのショーツって、初体験に相応しくなさすぎる!!
髪を乾かして、無造作にお団子にしたわたしは、どうしようどうしようと必死に考えた結果、陣平くんのスウェットズボンで顔を隠そう!と、畳まれたズボンを顔の前に持ってきて、隠しながら陣平くんの待つ部屋まで向かった。