第2章 初恋のはなし
むーーっと顔を膨らせて陣平くんを睨んでいると、陣平くんがわたしの背後に誰かを見つけた。
その顔を見て、わたしの後ろに立っている人物が誰か、すぐに分かる。
「あれ?陣平、来てたの?」
「姉ちゃん、おかえりー」
お兄ちゃんがヒラヒラを手を振り、わたしも後ろを振り返る。
立っていたのは姉の千速。
大学3年になった姉は美しさにますます磨きがかかっていて、わたしがどれだけ努力しても到底叶わない。
「あ!ミコトー!似合ってるぞ高校生の制服♡」
妹大好きな姉は、わたしの姿を見るなり、ぎゅーっと抱きついて頬擦りしてくる。
そんな大好きな姉を、恋のライバルとして見ないといけないなんて、神様は意地悪だな。
「陣平、私の可愛い妹に手ェ出したら殺すからな?」
「バァーカ!俺じゃなくて他の奴らに手ェ出されるのを心配しろよ!
こんなにスカート短くして脚出して!」
そう言いながら、また陣平くんはわたしのスカートを引っ張り、どうにか膝を隠そうとしている。
いったい、いつになったらわたしは妹じゃなくなるんだろう…
高校一年の春、同級生のみんなは、「高校生になって、ようやく大人になった気分」
なんてはしゃいでたけど、わたしはもっともっと大人になりたかった。
陣平くんの隣にいられるほど、大人になりたかった。