第2章 初恋のはなし
高校生になる頃には、お兄ちゃんの同級生の間では評判だったらしい。
「萩の妹が超絶可愛い」
当然だ。
中学時代、毎日半身浴、毎日ストレッチに筋トレ、毎日ヨガをして、スキンケアも欠かさなかった。
メイクだってコツコツと練習して、垢抜けるように髪を表参道でカットしてもらう。
お小遣いのほとんどを自分磨きに費やしたのだから、可愛いと言われないと採算が合わない。
高校の入学式を終えた日、家に帰ると男物の靴がもう一足置いてある。
「陣平くん!来てたの?」
「おー!ミコト。
…そうか、オマエ今日から高校生か」
高校の制服を着たわたしを目を見開く陣平くん。
「どうー?陣平ちゃん?俺の妹、可愛いだろ?」
隣にいたお兄ちゃんが陣平くんの肩に腕を回し、ナイスアシストをする。
陣平くんに可愛いって言ってもらえる…!
そう思いながらドキドキして陣平くんの反応を待っていると、陣平くんはわたしのスカートの裾を引っ張りながらため息をついた。
「スカート、短すぎんだろ。」
じっとわたしの顔を見ながらそう言う陣平くんは、いつの間にかわたしのことを可愛いと言ってくれなくなってた。
小学生のときや、中学生の頃は
「俺の妹、可愛いだろ?」
なんて、良く友達に言ってくれてたのに。
わたしが自分を磨けば磨くほど、周りから可愛いねと言われれば言われるほど、陣平くんは言ってくれなくなった。
陣平くんのために、可愛くなったのにな…
高校生までに可愛くなって、そしたら陣平くんに告白したい!
そう思っていた自分の決心が緩む。
「なーんだよ、陣平ちゃん。
昔はあんなに妹可愛い可愛い言ってたのに。
十分可愛いぜ?ミコト」
お兄ちゃんが隣でそんなことを言うけど、お兄ちゃんは毎日わたしのことを可愛いと言うからもはや何も響かない。
というか!お兄ちゃんじゃなくて陣平くんに可愛いって言って欲しいのに!!