第9章 俺のだ ☆
「昔、ミコトがクレープ食べてんの、絶対くれなかったよな」
「あれは!間接キスだから…恥ずかしかったの。
陣平くんのこと、好きだったから」
あの頃は、必死にクレープを守ってたな…
今思えば、間接キスなんてたくさんして貰えばよかったのに、お子様だったんだと思う。
「…じゃあ、その分今するか」
「え…」
なに?と首を傾げた時、陣平くんの腕がわたしの肩に回り、頭を抱き寄せながら陣平くんの唇がわたしの唇に重なった。
ちゅ…
っと、リップ音が夜道に響いたあと、ゆっくりと陣平くんの顔が離れた。
「み、道端で…!」
「バニラの味」
顔を真っ赤にするわたしを見て、陣平くんはべ。と舌を出しながらわたしが持ってるアイスをまた奪うと、おいしそうに食べてる。
もう、さっきからドキドキさせられっぱなしだ。
「それにしても女は大変だな。
一晩泊まるのにそんな準備いるのか」
わたしが下げてる軽いコンビニ袋を、陣平くんが代わりに持ちながら言う。
「そうだよ。
女の子は色々あるんだから!」
「…じゃあ、今日買ったヤツ、俺んちに置いてけよ」
少し前を歩く陣平くんがあくびをしながらそう言った。
「え…」
ぽかんとした顔をして立ち止まるわたしを見て、陣平くんが顔を少しだけ赤くしながら振り返って言う。
「なんだよ、その顔」
「それって…これからも泊まってもいいってこと?」
「…いちいち言わせんな」
そう言ってわたしの髪をいつもに増してわしゃわしゃと撫でた後、またあくびをしながらアパートの階段を登った。
これは…まさか、今日の夜陣平くんと…?!