第9章 俺のだ ☆
ミコトのカレーを食い終わるのは一瞬だった。
腹が減っていたこともあるが、美味すぎて夢中で食べていた気がする。
食事を終えると、ミコトがキッチンに戻り、食器や鍋を綺麗に洗い片付けた。
「陣平くん、カレーの残り、タッパーに入れて冷蔵庫に入れておくから明日食べてね」
「お。サンキュー」
ひと仕事終えて充実感に満たされた様子のミコトは、自分のカバンを持つと立ち上がり玄関に向かおうとする。
「じゃあ、わたしはこれで」
は?
帰るのか?
いや、もう夕飯を一緒に食べるという目的は達成したわけだから、何の不思議もないけど…
何なら、終電前には帰さないとと思っていたが…
俺は思わず、出て行こうとするミコトの腕を掴んだ。
もっと話したい。
もっと笑った顔が見たい。
なんなら、照れた顔も見たい。
そう正直に言えば良いのに、俺から出た言葉はあまりにもぶっきらぼうだ。
「…帰んの?」