第9章 俺のだ ☆
ミコトは友人たちに手を振って別れたあと、俺がいるのに気付き、笑顔で駆け寄って来た。
「陣平くん!」
「…珍しいな。そんなカッコ」
こういう時、きっと萩なら可愛いなとサラッと言うんだろう。
天邪鬼な俺は、つい言葉を間違えてしまう。
そんなこと気にも留めず、ミコトは笑いながら言った。
「デートだから、ちょっとでも可愛くしたくて」
「…じゃ、行くか。デートとやら」
そう言って助手席のドアを開けてやると、ミコトは嬉しそうに中に入った。
大学の正門で年上の男に迎えに来てもらうミコトは、よほど珍しく映るのだろう。
まわりの学生はチラチラとこっちを見て来た。
この大学は男の割合が多いらしい。
牽制しておかないとな。
ミコトは俺のもんだって。
年下の男達にライバル心剥き出しな目をしながらそいつらを見て、サングラスをかけなおすと、運転席に座った。
「どこいくの?何食べるの?」
にこにこ、楽しそうに笑うミコトが可愛くて、俺は急遽予定変更した。
本当なら、俺は肉が食べたかったから、焼肉にでも連れていこうと思っていたが
「何食べるかは、お前次第」
「え?」
俺の言葉の意味がわかっていない様子のミコトは、首を傾げながら俺の車が目的地に到着するのを待っていた。