第2章 初恋のはなし
「松田くーん!だーれ?その子」
後ろから、大人っぽい高校生の女の子が、陣平くんの名前を呼びながら近づいてくる。
「萩の妹。つまり、俺の妹?」
「なぁんだ、妹!
カワイイー」
あははと、わたしの中学の制服を見て笑うその人に、わたしは心の中で小さく言い返してた。
バカなひと。
陣平くんは、あなたなんて興味ないのに。
だって、陣平くんが好きなのは、
うちのお姉ちゃんなんだから…
きっと、わたしがあの日初めて陣平くんに出会った日に彼に恋をしたのと同じように、
陣平くんはわたしの姉に恋をした。
一緒に過ごしていれば、すぐに分かった。
わたしはいつも陣平くんを目で追っていて、それに気付かないほど陣平くんはお姉ちゃんを目で追っていたから。
一方通行な片想いを始めて、もう4年になる。
「カワイイだろ?俺の妹!
いじめんなよ?いじめたら俺が許さねぇ」
ぽんぽんとわたしの髪を撫でながら、その女の子を見てそう言う陣平くん。
ねぇ、どうしたらわたしのことを女の子として見てくれるの?
わたしは陣平くんの妹じゃないよ。
陣平くんに好きになってもらいたくて、彼の好みの女の子になりたくて伸ばし始めた髪。
お姉ちゃんは髪が長かったから、わたしも真似して伸ばそうと思ったの。
中途半端に鎖骨まで伸びた髪を、わたしは無意識に引っ張った。
もっと、可愛くなって可愛くなって…
高校生になったら、陣平くんに告白するんだ…
そう思いながら、わたしの中学生活はひたすらに自分磨きをして終わった。