第9章 俺のだ ☆
あぁ。
早く授業終わらないかな…
大学の授業がこんなに身に入らないことは初めてかもしれない。
友達のアユと講義室の真ん中に座りながら、授業を受け、集中できないわたしはノートに落書きをしてる。
「ミコト、今日来て大丈夫だったの?」
アユが心配そうに声をかけた。
「うん。お兄ちゃんは、わたしが医者になるのすっごく楽しみにしてたから。
足踏みしてる時間なんてない」
そう言って笑うと、アユも優しく笑って、そっか。と言った。
「そういえば、実習に行く病院、決めた?」
そんな友人の問いかけに、わたしは即答で答える。
「決めてるよ。
米花中央病院」
「あれー?ミコトは新出くんと一緒に附属じゃないの?」
「そのつもりだったんだけど、予定変更」
米花中央病院は、4年後の11月7日
陣平くんが身を呈して守る病院。
わたしが実習に行くのはその2年前から1年前にかけてだ。
少しでも、未来を変えられる可能性を保持できるようにわたしは実習先の病院を、東都大附属病院から米花中央病院に変えた。
「あらー。じゃあ、新出くんを狙ってる女子たちが附属病院争奪戦になるのか。」
「なにそれ」
「ミコトも気づいてるでしょ?
新出くん、ミコトのこと絶対好きだよ」
「えええ?!」
まさかのアユの言葉にわたしは講義中ということをすっかり忘れて、大声を上げて立ち上がった。
「コラ!そこ煩いぞ」
「あ…すみません。」
一言教授に謝ると、わたしはひそひそ声でアユに詰め寄る。
「怒られちゃったじゃん!」
「気付いてないあんたが悪いよー!
新出くんがミコトのこと好きなのはみんな分かってるよ。」